「お前、来月からWebメディアの担当な」って無茶振りされた人や新しい組織に入って「じゃあ、Webメディアやってもらうから」とほぼワンオペになった場合に、まずは知っておくべきWebメディア運営の心構えを紹介します。
Webメディアを中長期的に無理なく焦らず運用するためには、小手先のテクニックや成功事例は不要です。組織やメディアの状況によって、必要となる技術や事例は変化しますので、的確に取捨選択をしながらメディアの舵を取り、間違った時は次の方向に進路を修正できることが大切です。
いきなり無茶振りされて、調べてみたら膨大な記事や事例…一体何から手をつければと途方に暮れる気持ちはよくわかります。いきなり動き出す前に、状況を整理し、意思を統一し、安定して稼働できる体制を作ることから始めましょう。
運営が軌道に乗り始めるまでの産みの苦しみは大いにありますが、0→1または1→10ぐらいまでが最もクリエイティブで付加価値を作る仕事です。どんな大きなWebメディアも、0記事、ライター0人、予算0円から始まりました。
それでは、新人Webメディア担当がまず学ぶべき7つの心構え、はじまります。
目の前の仕事を無視しても、目的のすり合わせから始める
まずは、目の前に積み上がった大事そうな仕事を横に置いて。Webメディアの目的を関係者ですり合わせる必要があります。いわゆる期待値のコントロールという仕事です。
なお、よくあるWebメディアの目的は下記の3つです。最初は抽象的だったり、欲張りな目的が設定されていることがありますが、Webメディアは魔法の杖ではないので、
「お金やリソースをかけてでも本当に達成したいもの」と「できれば達成したいもの」と「その場のノリで答えたもの」に丁寧に分類しながら確認していきましょう。
- 競合会社の運営するWebメディアより大きな規模 or よりクオリティが高いメディアを作りたい
- 既存のWebマーケティングに加えて、Webメディアでも売り上げを作りたい・サービスの利用者数を増やしたい
- 自社の採用に繋げたい
必ず目的は明確に、そして言語化しましょう。目的が決まって、関係者に浸透したら、次は目的を達成するための方針と戦略作りです!
目的を達成するための方針・戦略作り
Webメディアの目的を達成するための方針や戦略作りは予算や人員、周辺環境などに左右されるので、鉄板はありません。しかし、予算の大小や人員の多寡で大きく大別はできます。
予算 | 人員 | Webメディアの方針 |
◯ | ◯ | 潤沢な予算と人員を使って、質の高いコンテンツを大量に作る王者の戦い |
◯ | × | 外部ライターと連携しながら、コンテンツを作成 |
× | ◯ | 社内メンバーをうまく巻き込みながら、メディアを運営 |
× | × | 頭を使って、うまくやるしかない(記事の続きを読んでください) |
予算がない場合は、Webメディアの責任者の巻き込み方や知識が結果を大きく左右します。まずは、最初の目標を自力(少ない予算)で達成して、その後は予算の増額を交渉しましょう。
担当者の知識と仮説が結果を左右する
Webメディアに関わる要素は様々ですが、会社経営や組織運営に比べると、やることは限定されます。現時点でのWebメディアは、サイトの中に記事やページがあり、記事の中にはテキストと画像、稀に動画が含まれます。
規模が大きくなれば、サーバーやデータベースなどの裏側や、アプリ連携などの外側の話も関係ありますが、100万PVまでは忘れて大丈夫です。
Webメディアを鶏とすると、記事が卵に当たります。親鳥が効率よく質の良い卵を産めるようにサポートするのが、担当者の仕事です。
鶏の例えが続きますが、鶏が美味しい卵をたくさん産むためには何が必要なのでしょうか?血筋や環境、えさ?わかりません。なので、きっと本を買って調べたり、先輩の養鶏家に聞きにいきます。
Webメディアも同じです。あなたが学んだ知識や教えてもらった別のメディアの実績を自分のメディアなりに実践します。勘とノリで運営しているヒマはありません。
十分な知識があるかどうかで、結果は全然変わります。最低限として、下記の17記事はすべて読み通してください。
» 独学でWebマーケティングを勉強する手順【無料9サイト紹介】
» マーケティングスキルマップからWebマーケの手法を学ぶ【60語解説】
» Webマーケティング初心者に有料で伝えている15のこと【ガチコンサル】
» 初めてのロジカルシンキング「現状・理想・問題・課題」を学ぶ
» インターネットで新規ユーザーを集める11の手段【Google Analytics基準】
» インターネットで売り上げを計算し最大化する式は3つだけ
» 本当の競合を見つける手法【マックの競合はコンビニ】
» 【サンプル公開】ペルソナ作りはマーケティングに必須の技術です
» カスタマージャーニーの作り方【誰でもできる】
» 商品・サービスを正しく分析できる4P4C分析の手順【事例あり】
» KGIと3C分析でKSFとKPIを決める手順をドラクエで説明します
» Webマーケティング初心者がユーザー理解を学ぶ
» データ・ドリブンなWebマーケティングを実施するための基礎知識
» Webマーケティングでユーザーを獲得するための15用語を解説
» コンバージョンを最大化に必要な12の用語を解説【Webマーケティング】
» Webマーケティングでユーザーをリテンション(継続)する7つの方法
» Webマーケティングで必要なクリエイティブ制作とプログラミング
また、Webマーケティングに関する書籍を3冊、コンテンツマーケティング関して3冊、ブログ運営に関して3冊、合計9冊の書籍を買ってください。古すぎず(1~2年以内)、Amazonで10件以上の評価が付いている書籍であれば、構わないです。1冊ずつの中身ではなく、全体像をつかむことが目的です。
しんどいでしょうが、Webメディアを担当するあなたが社内で圧倒的にWebメディアに詳しくなるべきポジションです。あなたのインプットの量と質に比例して、アウトプットの量と質は変化します。
さあ、最後に勉強会への参加です。勉強会に参加するメリットは、内容よりも同業他社とのネットワークです。Webメディア関連の勉強会は結構探しにくく、東京都内で開催されることが非常に多いので、地方での参加は苦労します。
出張や旅行とくっつけて参加できる機会を逃さずに参加するか、どうしても離れられない場合は、最新情報や人脈を持っている人と繋がるしかありません。
メディア運営の小手先テクニックに頼らない
書籍やサイトでWebメディアの勉強をしていると「○○でPVが10倍!」などの心惹かれる情報が出てきます。しかし、テクニックや手法論に執着せずに、「なぜ○○を実行しようと思ったのか?なぜ実行できたのか?」という背景に注目しましょう。
Web業界ではもてはやされたテクニックや手法があっという間に陳腐化します。古くなります。それよりも、手法を生み出した考え方を学びましょう。分析や挑戦の結果で、テクニックは開発されます。
ターゲットを誰でもわかるほど明確に
Webメディアを読んでいる人が、どんな人なのかというターゲット設定はやりすぎるほどに明確にしましょう。年齢、出身地、住所、学歴、仕事などの基礎的な情報から、趣味、考え方、交友関係、口癖などの個性までを細かく設定します。
例えば、僕が編集長を務めるTABIPPO.NETの場合は、ざっくり言えば「旅行好きの若者」がターゲットですが、メンバーによって細かい認識がズレまくっていました。
ターゲットにドンピシャで実在する共通の知人がいれば、もっとも良いのですがメディアに関わるライターが10人を超えた時点で、詳細なターゲット像を作成しました。ターゲットの要素は下記の11項目が含まれています。
・キャッチコピー
・名前
・顔写真
・年齢
・職業 or 大学
・会社名 or 学部
・住所
・家族形態
・エピソード(プロフィール)
・旅行経験
・人生のゴール
Webメディアコンサルでは、実際に使用している2人のターゲット「山本 愛」と「伊藤 正直(まさなお)」をお見せしながら、ターゲット設定について解説しています。
ライティングについては聖書3冊を読み込む
Webライターが、SEOに取り組む際に知っておくべき6つのことでも紹介しましたが、ライティングを独学だけで勉強しようとするのは効率が悪いです。書籍を購入して、プロのライターたちから文章の書き方を学びましょう。
TABIPPO編集部として、聖書として認定している文章についての本は下記の3冊です。特にこだわりがないなら、迷ったら3冊に立ち返るようにすればOKです。
Webメディア運営はマラソンなので、気合いがなくても運営できる体制を作る
ここまでで、目的をすり合わせ、戦略とターゲットを組み立て、勉強する大切さをお伝えしましたが、ここからは運用の話に入ります。これまでは準備段階です。
予算は少なく、人員も少ない状況でのWebメディア運営だと、ついつい担当者の気合と体力で乗り切ろうとしてしまいますが、Webメディアは早くとも数ヶ月、平均して数年は継続して効果が出る事業です。
予算があれば、お金の力で一気に走り切ることもできますが、ここまで記事を読んでいただいた方は失礼ながら予算がない方だと想像して進みます。
Webメディアに時間がかかる理由は「SEO」と「ライターの育成」です。SEOについては、公開した記事がGoogleに掲載され、順位が安定するまでに、新しいメディアだと2~3ヶ月かかります。
また、ライターの育成も、ほぼ素人の方をライターとして採用する場合、育成のノウハウが少ないと10~30記事程度かかりますので、月に10記事を執筆できても1~3ヶ月は見込んでおきましょう。
気合と体力で無理をしながらの運営では、SEOの進捗とライター育成の結果が出る前に潰れてしまうかもしれないので、ガツっと立ち上げをしたらルーティーンワークは自動化し、よく聞かれることはQ&Aにし、よく間違える部分はマニュアルにして、できるだけ管理コストを減らします。
さらに、ライターの進捗管理はGoogleのスプレッドシートやチャットツールを活用、記事の質を左右する企画とタイトルは編集会議などで集中化することで、全体をどんどん最適化します。
これらは社内のツールや組織の構造によってカスタマイズする必要がありますが、70%くらいはどのメディアであっても共通の方法でできるはずです。詳細はWebコンサルのメニューからお問い合わせください。
改善を前提とした体制と仕組みを作る。特に削ることに注力する
フルマラソンと例えたWebメディア運営を支える体制と仕組みは改善ありきでOKです。つまり、初めて作成した形にこだわらずに現場の声を拾いながら、どんどん変更していきましょう。
特に、Webメディアの運営歴が長くなってくると、システムやルール、マニュアルが煩雑化して、却って効率を悪くすることがよくあるので、形骸化しているルールや重複しているシステムなどは、どんどん削っていきましょう。
少なくとも半年に1度は時間を確保して、体制と仕組みの改善に取り組むべきです。TABIPPOで改善をする場合は、ライターやメンバーに「いらない、無駄だと思ったルールや仕組みを5つ教えてください」とアンケートした結果を受けて、思い切りよく古いものは捨てるようにしています。
ほんと、いつのまにかルールとマニュアルって増えてるんです…
予算を作るために、頭をひねって結果を出す
最後に、大切な予算・お金の話です。Webメディアの運営に限らず、何かをするには必ずお金がかかります。タダのような気がする自分の時間でさえ、会社からは給料という形でお金が支払われています。
ただし、「Webメディアをよりよくするためにお金が必要なのに、会社(組織)が予算を用意してくれない」という文句は筋違いです。そんな文句をいくら決裁者に伝えても状況は変わりません。
予算が必要なのであれば、まずは予算がなくてもできる方法を必死に考え、試行錯誤して、ある程度の結果を出しましょう。PVでも、記事数でも、決裁者が事前に(ここ大事)納得している指標であれば、何でも構いません。
結果を出した上で、「予算があれば、○○倍に伸ばせます」と伝えることで、初めて交渉として成立します。結果が見えていないものに、お金を出してくれるほど会社は優しくないです。基本的には。もしすでに出してくれるなら、超ラッキーなのでそれらをも無駄にせずに、次の予算をもらえるように結果を出しましょう。
なお、結果の指標については、事前に話しておくべきです。自分が頑張って出した結果が、上司や先輩とのすり合わせが少なかったせいで評価されない状況って、不幸なので。
まとめ
今回の記事では「新人Webメディア担当がまず学ぶべき9つの心構え」という切り口で、Webメディアの立ち上げから運用方法のコツをご紹介しました。
全体をもう一度まとめると、下記の9点が重要なポイントです。
- 目の前の仕事を無視しても、目的のすり合わせから始める
- 方針と戦略が必要で、予算と人員の多寡で4つに大別できる
- 担当者の知識と仮説が結果を左右する
- 小手先テクニックには頼らない
- ターゲットを誰でもわかるほど明確にする
- ライティングについては聖書3冊を読み込む
- 気合いと体力に頼らない運営体制を作る
- 改善を前提とした体制と仕組みを作る。特に削ることに注力する
- 予算を作るために、頭をひねって結果を出す
それでは、また別の記事でお会いしましょう!