ティールやホラクラシーで組織は進化するのか

  • 2019.05.30

旅祭2018 × PEACE DAYを終えて、半年に一度の全社合宿に行って来ました。TABIPPOの全社合宿は、インターンから創業メンバーまで全員が参加することが特徴です。インターンが合宿に呼ばれることは珍しいらしく驚かれます。

今回の議題は旅大学を担当しているみっちーが会社ブログにまとめてくれました。
» TABIPPOの全社合宿ってなにを話してるの?最近僕らが考えてることを書いてみた

 

TABIPPO合宿2018秋の議題

TABIPPO合宿2018秋の議題

①下半期のリソース配分は?
②承認、許可、ボードメンバーについてどうする?
③利益の再配分について。給料どうする?
④経営指標はどう設定する?

元TABIPPOスタッフで人事コンサルとして働いている後輩がサポートに入ってくれたので、これまでの合宿で一番良い時間でした。具体的には、事前に課題収集とグルーピング、当日の議題整理が的確だったため、合宿時間内にかなり突っ込んだ部分まで議論が進みました。個人的には合宿のノウハウが貯まったのが大きな学びです。

今回の記事では議題②に関わります。文化としてはあったのですが、TABIPPOには明確な承認や許可のフローがありません。ボードメンバーや取締役会も存在しません。

 

承認や許可がないと動きづらいという悩み

承認や許可がないと動きづらいという悩み

TABIPPOが株式会社になる以前、学生団体だった時も承認や許可はありませんでした。代表はしみなおですが、代表としての権限を有するわけではありません、株式会社になっても社長という役割があるだけで、権限はありません。僕や小泉という共同創業者についても同様です。

しかし、中には「誰に許可をとって物事を進めればいいのか分からない」「承認フローや許可を取る方法」を知りたいという声がありました。

 

承認や許可はピラミッド型でヒエラルキー的な組織が持っている特徴です。一方で、TABIPPOではこれまでも、「何かを決める必要があれば、その都度に関係者を集めて議論をして決めればいいじゃない」という文化でした。

創立時から携わっているメンバーは、この説明で違和感はなかったのですが、ピラミッド型の組織から転職して来たメンバーは戸惑っていた、ということを解決するために動き出します。

 

TABIPPOはホラクラシー型の組織を目指そうとしている

TABIPPOはホラクラシー型の組織を目指そうとしている

どうやら、最近の概念でTABIPPOが目指してる感じの組織を「ホラクラシー型組織」と定義されているらしい。そんじゃ、ちょっと調べてみましょう。良さそうなら目指しましょう。というのが現状です。

ただ、あくまでも今の状況を踏まえての最善手としてのホラクラシー型組織を選ぼうという判断です。例えば、TABIPPOとして良いとする働き方やメンバーが入れ替われば、別の組織形態の方がフィットするかもしれません。あらゆる決定は一時的なもので、必要があればその都度修正すれば良いと思っています。

何はともあれメンバーで議論するためには、知識を揃える必要があるのでホラクラシーと、さらに上位の概念であるティールについて勉強しましょうとなりました。課題として渡されました。せっかく作ったので、みなさんにもまとめと参考資料を共有します。

ちなみに、参考資料を読んだ上での解釈や表現が多くあるので、ぜひ記事末にある

 

ティールについて

ティールってなに?ホラクラシーと一緒?

ホラクラシーはヒエラルキーの対極で、組織構造(とそこから派生するマネジメント)の概念。ティールも同様に組織構造と概念の話だが、ティール組織の対極にあるのは「達成型組織」。ティールの方が概念的に抽象度が高く、ホラクラシー組織はティール組織の一形態とされています。

詳細を追記すると、フレデリック・ラルーは著書の中でティール組織の組織構造を『パラレル構造』、『ウェブ構造』、『入れ子構造』という3つに分類し、この中の『入れ子構造』をホラクラシー的構造であるとしています。ホラクラシー=ティールではない。ここ重要です。

 

ティール(teal)は元々「青緑」を意味し、新しい組織のあり方を象徴する色として選ばれています。ティールの手前にある「グリーン」組織は理想にかなり近いが、関係者全員の意見をまとめているうちに、ビジネスチャンスを失う危険性がある。また、合意が掲載できない場合に、社長や権限者の意思決定に委ねてしまうという課題を持っています。

グリーンから進んだティール組織は、ホラクラシーと同じく生命体をイメージしていてティール組織の共通点として『セルフマネジメント(自主経営)』、『ホールネス(全体性)』、『組織の存在目的』を挙げています。

 

『パラレル構造』と『ウェブ構造』ってどんな構造?

パラレル構造

数百人から数千人のメンバーをチームに分けて、チーム内でメンバーが自分の役割と他のメンバーに対する相互の約束(コミットメント)を決める。各チームは計画や投資、予算、採用、研修などを自主的に決定する。各チームが高い自律性を持てるような仕事に適する。

例:FAVI(真鍮鋳物製造)、リソーシズ・フォー・ヒューマン・ディベロップメント(NPO、各種依存症からの回復支援など)

 

ウェブ構造

パラレル構造と同様に投資や財務についてはチーム内で決定するが、役割とコミットメントについては話し合われない。例外として密接に関わる同僚同士では1対1の話し合いが設けられ、コミットメントが文書化されることもある。

例:モーニング・スター(トマト加工業者)

(『入れ子構造』は後述のホラクラシーについての項目をご覧ください)

 

ティールの考え方をTABIPPOで取り入れるとしたら?

ティール組織の3事例の中では、TABIPPOは1つのチームとして機能する(しかない)ので、入れ子構造を選択することになります。ただし、規模が拡大した場合は再考の余地がありそうです。

また、カヤックの記事で書かれていたティール組織に共通する要素として「ヒエラルキーをなくすための仕組みがある」に共感しました。現時点で、社内で話題になっていない領域です。文化の浸透で解決できない可能性を込めて、仕組みを作るべき。

 

ホラクラシーについて

ホラクラシー(Holacracy)とは、ヒエラルキーの対極にあるホラーキー(Hola-)による統治(-cracy)のこと。ホラーキーとは、ホロン(holon)という概念を発展させた階層概念で、ホロンは「部分でありながら全体でもある」という概念で、物理学や哲学で使われている用語です。

注意として、ホラクラシーの中でホロンは人ではなく、ロール(役割)指します。つまり、ロールが主役であり、人が主役ではありませんし、ロール=人でもありません。1つのロールを1人が担当しても良いし、複数人が担当しても、1人で複数のロールを担当してもOK。

 

ヒエラルキーを平面のピラミッド型と図示するのに比較して、ホラクラシーは立体の球形で表されます(円形ではない)。

ホラクラシーの例として挙げられているのは人体。人の身体は臓器や器官が外的・内的な事象に対してそれぞれの判断で活動しているが、1つの身体として統合もされているイメージです。

 

ホラクラシーを導入している他社事例を踏まえて

ホラクラシーは何をするか(To Do)ではなく、どうあるべきか(To Be)が重要だと感じたので、どの事例について良い・悪いを議論することに強い意味はなさそうです(面白いけど)。

他社事例の活用としては、ホラクラシー型の組織を目指すにあたって「なぜ、それらの事例が生まれたのか」という概念に遡って、抽象化していく議論が有効と考えました。

社内のメンバーが人体の臓器のように自己判断をして、決定を下し、実行に移すために生まれたと感じた事例は下記でした。

・上司部下の概念が無い(ダイヤモンドメディア)
・メンバーの社内外ボーダーレス化(ダイヤモンドメディア)
・財務情報は全部オープン(ダイヤモンドメディア)
・給与以外の情報は全てオープン(ソニックガーデン)
・ビジョン合宿(ソニックガーデン)
・経営陣と同レベルでの情報共有(アトラエ)
・役員以外の肩書なし(アトラエ)
・情報は全てオープン(えふなな)

上記が備えられている=自己判断できる状態なんだから、自分のことは自分で決めてね、というロジックで生まれたのが働き方に関する事例なのかと思います。

・基本はリモートワーク(ソニックガーデン)
・勤怠も進捗も業務も管理をしない(ソニックガーデン)
・出勤時間は自由(アトラエ)
・服装も自由(アトラエ)

興味深いのは、これらの働き方に関する事例が、従業員満足や働き方の多様化などとは別の出発点(ホラクラシー)から導かれたことですね。

 

ホラクラシーの考え方をTABIPPOで取り入れるとしたら?

合宿でも同じ話をしましたが、自分で決定をするってすごく怖いことです。僕をはじめとする創業メンバーは、創業者だって覚悟もあるし、年齢が高い分それなりの実績もあるので、「怖いけど、何とかなるやろ」って気持ちになりやすい。

一方で、新しい(年齢が若い)メンバーは実績も技術も少ない中で決定を下す訳なので、心理的なプレッシャーが強くあるはず。情報をよりオープンにするとか、肩書きをなくすなどの打ち手で、やや緩和はすると思うけど、当たり前のように決定して即行動できるために、「人に決定権を持たせるのではなく、ロール(役割)に決定させることが大切だと感じました」。

ロールを担当している人が1人であればこれまでと同じですが、ロールを複数の人が担当している場合は、会議体で決まることが多いはずなので、決め切りやすいんじゃないかな、と。

 

解説は以上です。ティール・ホラクラシー組織を目指すという方向性は決まったものの、具体的にどのようにするのかはこれから社内で議論を進めていきます、それこそホラクラシーに。

なお、最後にみっちーがまとめてくれた資料集を掲載します。

 

ティールやホラクラシーに関する参考図書

 

ティールについて学ぶ参考記事

概念/理論を学ぶ(5記事)

・今話題の「ティール組織」とは?次世代型の組織モデルを理解する
・10分で分かる、いま話題の未来組織「ティール組織」
・ティール組織とは?3つのブレークスルーで次世代組織モデルを理解しよう
・「ホラクラシー」とは?役職のない自由な組織体制のメリット・デメリット、導入事例をご紹介
・話題のティール組織・ホラクラシー組織の繋がりを実践的に徹底解説!

他社事例を学ぶ(15記事)

・ピラミッドかホラクラシーか。目指すべき「最強の組織」とは
・ホラクラシーなのかティールなのか : 麻布十番で働くCEOのBlog
・「指示なし」「出世なし」ですけど、なにか?
・メンバー全員が会社の株主。言い訳できない相互評価
・これからの時代のニュースタンダード。「理想の組織のつくり方」
・ダイヤモンドメディアのホラクラシー
・ダイヤモンドメディアのサバイバルジャーニーガイド
・上司が部下を評価しない制度をなぜ選ぶ?独自給与制度の3社が討論(やつづかえり)
・給料が与えるものは安心?モチベーション?独自給与制度の3社が討論(やつづかえり)
・管理をなくせばなくすほど生産性が高まる新しい組織の形「ホラクラシー」その背景とメリット
・「管理」をなくせばうまくいく〜自律型組織をつくる新しいマネジメントのスタイル
・ホラクラシー型組織で8年経営してみた
・会社経営の全ては自然から学べる。テクノロジーの発達で変わる社会において、自然な経営とは?/ダイヤモンドメディア武井浩三さんインタビュー
・ホラクラシーを徹底解剖!Q&A「1000本ノック」(初級編)

考察/批判を学ぶ(4記事)

・話題のティール組織について、わかりやすくまとめてみた(やや偏見あり)
・上下関係のないホラクラシーなんてやめておくべき4つの理由
・ホラクラシー組織への誤解と本当の意味
・ティール組織に取り組む前に知っておきたい、3つの誤解

 

ホラクラシーについて学ぶ参考記事

概念/理論を学ぶ(5記事)

・「ホラクラシー」とは? – 『日本の人事部』
・「ホラクラシー」とは?役職のない自由な組織体制のメリット・デメリット、導入事例をご紹介
・上司も部下もない 「ホラクラシー」組織の衝撃
・ホラクラシーとは? ホラクラシー型組織(経営)の意味とメリット・デメリット
・話題のティール組織・ホラクラシー組織の繋がりを実践的に徹底解説!

他社事例を学ぶ(18記事)

・日本の代表的なホラクラシー企業”6社”
・上司が部下を評価しない制度をなぜ選ぶ?独自給与制度の3社が討論
・給料が与えるものは安心?モチベーション?独自給与制度の3社が討論
・自社に合う人材、合わない人材をどう見極める?独自給与制度の3社が討論
・ホラクラシー経営を実践する人事部がない会社のHRTech活用事例
・経営者を知り、道具箱を解体し再構築する「ミドルの役割」とは──ティールを語る前に
・出世の概念がない「ホラクラシー・ベンチャー」の働き方
・ピラミッドかホラクラシーか。目指すべき「最強の組織」とは
・経営学は、突き詰めると教育学。子育ても同じ ホラクラシー経営を実践するダイヤモンドメディア社長の子育て(後編)
・上司も部下もない 「ホラクラシー」組織の衝撃)
・上司なしルールなし管理しない「ホラクラシー経営」とは?
・若手が辞めない「ホラクラシー経営」とは?
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・役職なし、上司なし、管理なし!「ホラクラシー」は近未来の組織スタイル!?
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・社員に誇りとやりがいを。役員が人事権を手放した究極のホラクラシー型組織─
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